いなか伝承社(地域活性化支援)のブログ

和歌山県内各所の農山漁村のファンを作り、土地も含めた「慣習や風俗、信仰、伝説、技術や知識」の次世代への伝承を目的とする団体のブログです。  https://tsuku2.jp/inakadss 

【祈りのコトバ、の消滅】

 

ある朝早くにフィールド調査していたら、小さなほこらの前でおばあさんが一生懸命何かを唱えていました。

聞き耳を立てていると、過去に聞いたことのある祝詞とは全く異なり、抑揚もなく、どこで言葉が切れているのか全く分からない、まるで呪文のようなコトバをおばあさんは唱えていました。

そのほこらに祀られていたのは「カサガミさま」。
漢字で書くと"瘡神"。
一般的にはできものや梅毒の神様で、おばあさん曰くこれまで色んなご利益があったとのこと。
この土地では地域の氏神さまでもあり、地域を守ってもくれています。

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おばあさんのコトバは、カサガミ様への祈りのコトバでした。
きっと神社でよく聞く祝詞のように、本来は漢字で表すことができ、意味のあるフレーズを繋いで神様に人間が想いを伝えるコトバだったはずですが、長年の間に音だけが伝わり、残り、今は本当に信心のある人だけが使っているコトバになってしまっているようです。

おばあさんは毎朝ほこらにやってきては、お祈りされていました。
ただ、カサガミ様を祀っている集落は高齢化・過疎化が進み、たぶんもうカサガミ様へ祈りを捧げる人が増える要素はありません。
あと10年したら小さなほこらの歴史はみんなの記憶から忘れられるかもしれません。
ほこらの入れ物だけは残っても、祈る人がいなくなり、集落から神様が消え、それと共に神様と人をつなぐ祈りのコトバも失われるでしょう。
もしかしたら、日本各地の田舎の小さなほこら毎に八百万の神様がいて、祈りのコトバがそれぞれ異なっているかもしれません。
それらもたぶん、毎日日本中のどこかで失われていっているんだろうなぁ、と気付いてしまった日でした。

祈りのコトバの録音、文字おこし、その意味の調査など行って、無形の民俗文化財として、各地の市町村で残してもらえないかなぁ・・・

 

※写真は本文中のほこらとは関係ありません。イメージです